第75号

Harveyの成長と法律事務所の時間当たり課金

法律AI企業Harveyが企業価値110億ドルで投資を受けました。文書作業時間が減れば法律事務所の報酬と利益はどう変わるのでしょうか?AI導入の現状と課金方式を併せて見てみました。

ビジネスHarveyの成長と法律事務所の時間当たり課金

法律AI企業に集まる投資

2022年に設立された法律AI企業のHarveyが、2026年3月25日、企業価値110億ドルで2億ドルの投資を調達したと発表しました。GICとセコイア・キャピタルが共同で主導した投資です。創業から約3年半で企業価値100億ドルを超える非上場企業、いわゆるデカコンになったわけです。

Harveyは、弁護士が契約書を検討し、判例を探し、文書の草案を作成する際に使うAIサービスを手がけています。法律知識が必要な業務を、顧客企業の資料や業務手順に合わせて処理できるよう支援する会社です。

私は、この会社が成長する過程で法律事務所の課金方式がどう変わっていくのかに関心があります。働いた時間に応じて報酬を受け取る組織が、業務時間を減らすツールを導入したら、節約した時間の価値を顧客とどう分け合うことになるのでしょうか。

企業価値と顧客数がともに増えました

投資調達の際に認められたHarveyの企業価値は急速に上昇しました。主要な発表を時系列で見ると以下の通りです。

  • 2023年12月シリーズB:7億1,500万ドル
  • 2024年7月シリーズC:15億ドル
  • 2025年2月シリーズD:30億ドル
  • 2025年6月シリーズE:50億ドル
  • 2025年12月投資:80億ドル
  • 2026年3月投資:110億ドル

2023年12月と比べると、約2年3か月で15倍を超えました。事業規模も拡大しています。Harveyは2025年8月に年間経常収益(ARR)が1億ドルを超えたと発表し、2026年3月24日にFast Companyは1億9,000万ドルを超えたと報じました。ARRとは、繰り返し発生する契約収益を年間ベースに換算した指標です。1年間で実際に認識された売上や利益とは区別する必要があります。

3月25日の会社発表によると、顧客には米国トップ100法律事務所(AmLaw 100)の過半数、500以上の社内法務チーム、50の資産運用会社が含まれています。顧客が存在する国は全部で60か国です。同発表でセコイアのパット・グレイディは、Harveyを使う弁護士が10万人を超えると説明しました。セコイアが3回にわたって投資を共同で主導したという事実も、長期的な成長に対する投資家の期待を示しています。