中国がMetaによるManus買収の撤回を求めた後に残る問題
中国当局がMetaによるManus買収の撤回を求めました。再買収の資金調達と、人材・技術の分離という残された課題を見ていきます。
ビジネス買収発表の4カ月後、取引撤回命令が出ました
Metaは2025年12月末、AIエージェント・スタートアップのManus買収を発表しました。取引規模は約20億ドル以上と報じられました。その後、Manusの従業員はMetaのシンガポールオフィスに移り、製品連携も始まっている状況でした。


2月にはMeta Ads ManagerからManusにアクセスできる機能が報じられ、3月にはManusが広告データを読み取って分析する連携機能を公開しました。画面上に入口ができることと、両社の技術・データがどこまで統合されているかは分けて見る必要があります。Manusの連携機能の説明
買収発表から約4カ月後の4月27日、中国国家発展改革委員会(NDRC)に設置された外国人投資安全審査担当事務局が取引の撤回を求めました。共同創業者のシャオ・ホン氏とジー・イーチャオ氏が中国を離れられなくなったとの報道も出ました。買収契約を結んだ後でも、規制問題が取引の実行を変えうることを示す出来事です。
私はこの出来事を、AI技術と人材の国境を越えた移動を政府がどれほど敏感に見ているかを示す事例だと捉えています。ただし、当局は具体的な判断理由を公表していません。どのような基準が適用されたのか、実際の撤回方法がどうなるのかは、さらに確認が必要です。
急成長した企業が海外への売却を選びました
Manusは短期間のうちに、製品公開、資金調達、海外移転、売却を進めてきました。
2025年3月にエージェントのデモで注目を集めた後、4月にはBenchmarkが主導した7,500万ドルの資金調達が報じられました。7月には中核人材をシンガポールに移し、12月には年間経常収益(ARR)1が1億ドルを超えたと発表しました。同社はローンチから8カ月での記録だと説明しています。ARRはその時点の経常収益を年換算した指標であるため、その年に実際に1億ドルを稼いだという意味ではありません。Manusの発表
Manusは、ユーザーからの依頼を受けて資料を探し、コードを実行し、成果物を作成するAIエージェントです。Metaがこの技術を手に入れれば、広告主や一般ユーザーに提供するタスク遂行機能を拡張できます。今回の買収が持つ事業上の意味は、こうした製品拡張の可能性に見出すことができます。

Manusは中国で創業した企業でした。もともとの運営会社である「バタフライエフェクト(蝴蝶效应)」は中国に開発拠点を置いており、その後シンガポールへ拠点を移しました。海外に法人やオフィスを構えたとしても、移転の過程における技術、データ、投資に関する義務が併せて審査対象となりうる状況でした。
中国商務部は1月8日、この買収が輸出管理、技術の輸出入、対外投資などの法規に適合しているかどうかを関係部門とともに評価・調査すると発表しました。そして4月27日、投資禁止と取引撤回の要求が公表されました。商務部の発表
4月27日の公告は、Manusプロジェクトの外国人による買収について投資禁止の決定を下し、当事者に撤回を求める内容でした。法律・規則に基づく措置だとしていますが、適用条項や判断根拠、具体的な履行期限は公表されていません。NDRCの公告
公告には「Manusプロジェクト」という表現が使われています。ただし、この一語だけをもって、技術の原産地のみを基準にどこにでも管轄権を行使するという新原則が確定したとは言えません。今回の取引に当局が介入したという事実と、他の取引にも適用される法的基準は区別して考える必要があります。