品目タイプごとに3ユーロ、EUの少額小包関税
シャツ・玩具・サングラスのように品目タイプごとに3ユーロずつ。EUの少額小包関税の計算方式とTemu・SHEINの対応を整理しました。
ビジネス箱は1つでも関税は品目タイプごとに課税
EU域外の販売者に5ユーロのTシャツを注文したとしましょう。新たな暫定関税の適用対象であれば、Tシャツに3ユーロが課されます。同じ関税分類のTシャツ複数枚なら1タイプとして計算されますが、スマホケースやサングラスまで加わって3つの異なるタイプになれば9ユーロになります。**計算基準は箱の数や商品の個数ではなく、関税分類に基づく品目タイプです。**販売者などが納付義務を負い、そのコストが消費者価格にどれだけ反映されるかは販売方針によって変わります。
2026年7月1日から欧州連合(EU)が開始した新たな関税の話です。TemuやSHEINなどに及ぼす影響が大きく報じられました。しかし、私はこの「3ユーロ」という数字が際立って小さいという点に、かえって引っかかりを覚えました。箱1つに数ユーロ上乗せしたところで、年間59億個も押し寄せる流れが本当に止まるのでしょうか。措置の規模と目標が噛み合っていないように思えたのです。
EUは公正な競争と消費者保護を本措置の理由として説明しています。私はこれと併せて、企業が個別直送と現地倉庫のコストをあらためて比較することになる点に注目しました。政策の公式な目的と、予想されるビジネス上の効果は分けて捉える必要があります。
📦 「小包ごと」ではなく「品目タイプごと」に3ユーロ
まずルールから正確に確認しましょう。今回の関税は小包1個あたりに課されるのではなく、小包に含まれる品目タイプごとに課されます。したがって、1つの箱に何を詰めたかによって金額が変わります。
これまでEUは、150ユーロ以下の品物には関税を課していませんでした。2008年に基準額が150ユーロに引き上げられたデ・ミニミス1免税制度です。少額の小包一つひとつに関税を課そうとすれば徴税額以上に行政コストがかかるため、いっそ免税にしたほうが合理的だった時代のルールです。文字通り「審理するに値しないほど小さい」という意味でもあります。
問題は、その「時代」が完全に変わってしまったことです。欧州委員会の資料によると、EUに流入する少額小包は2022年の約13億個から2025年には約59億個へと4倍以上に増えました。59億個を年間の日数で割ると、1日あたり約1,600万個になります。そのうち90%以上が中国発です。過去よりはるかに膨大な物量を、従来の制度のままで処理することになったのです。少額貨物のために設けていた小さな例外が、今や大量輸入がそのまま素通りする通路になってしまいました。
7月1日からは、150ユーロ以下の小包であっても品目タイプごとに3ユーロが課されます。シャツ1枚なら3ユーロ、シャツにおもちゃ、サングラスなら3品目なので9ユーロです。同じTシャツ3枚なら1品目なので3ユーロとなります。少額輸入品の関税免税がなくなれば、販売者は変化したコストを反映せざるを得ません。
このルールは特定の国やプラットフォームだけに適用されるわけではありません。ただし、少額の直送便の比重が大きいTemu、SHEIN、AliExpressなどのビジネスには大きな影響を与え得ます。彼らは中国の倉庫から個別の注文を1点ずつ航空便で欧州の玄関口まで直送する方式で急成長しました。免税要件を満たす少額注文は、無関税で持ち込むことができたからです。欧州域内で正規に関税をすべて納めて競争していたH&MやZARAのような企業から見れば、そもそも競争条件が不公正でした。同じ服を売っても、一方は関税を払い、もう一方は払わないのですから。EUが「不公正な競争」と呼んだのは、まさにこの点です。
EUが掲げた大義名分はもう1つあります。欧州委員会は今回の措置によって、欧州の都市部における商業圏の「空洞化」を防ぎたいと述べました。安価な個人輸入が押し寄せることで街の個人商店が次々と姿を消し、そこにあった雇用と地域コミュニティがともに崩壊していくという問題意識です。関税の議論の裏には、地域の商業圏が崩壊することへの悩みも潜んでいるのです。3ユーロが単なる税収確保だけを狙った措置ではないことを物語る部分です。