第141号

変圧器と電力網の調達が遅らせるAIデータセンター建設

一部の大型変圧器の長い納期や送電網接続、地域社会の懸念がデータセンターの工期を遅らせています。推論需要の増加まで考慮し、投資計画で確認すべき条件を整理します。

ビジネス変圧器と電力網の調達が遅らせるAIデータセンター建設

2026年4月、米メイン州議会は一定規模以上の新たなデータセンターを一時的に制限するモラトリアム1​法案を可決しました。しかし4月24日、ジャネット・ミルズ州知事が特定地域のプロジェクトに対する例外規定がないことを理由に拒否権を行使しました。議会での可決と法の施行は区別して捉える必要があります。

法案を発議したメラニー・サックス議員は当初、「メイン州はデータセンターの候補地でもないのに、反応などあるだろうか」と考えていたといいます。ところが発議した後に、自らの州にすでに二つの大型データセンタープロジェクトが進出してきていることを知り、法案は議会を通過しました。

『データセンター反対』で今年第1四半期だけで200兆規模の建設が中断・遅延データセンター反対で今年第1四半期だけで200兆規模の建設が中断・遅延chosun.com

他の地域でもデータセンター建設を制限しようという議論が続いています。Sightline Climateは2026年に稼働予定だったプロジェクトの相当数が遅延する可能性を提示しており、米国の複数の州でモラトリアム法案が発議されました。ただし、発議・可決・施行はそれぞれ異なる段階です。

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投資資金とチップを確保できても、電力設備や接続、許認可が整わなければ稼働させることはできません。プロジェクトごとに遅延の原因は異なりますが、電力の確保が重要な条件として浮上しています。

私は、長い建設期間の間にAIの使われ方まで変わり得るという点に注目しました。学習と推論2​の需要をともに考慮し、電力・冷却・機器構成をどれほど柔軟に変更できるかを見極める必要があります。

発表された投資と実際の稼働の間にある条件

大手テクノロジー企業の設備投資(Capex)が増加しても、その金額のすべてがデータセンターの建物やAI学習施設だけに向けられるわけではありません。設備やサーバー、ネットワークなどを含む投資計画と、実際の完工・稼働能力は区別して見る必要があります。

Sightline Climate3​は、データセンタープロジェクトの発表と建設の進捗との間には大きな乖離があると分析しました。建設計画に含まれる電力容量(GW)4​のすべてを該当年に実際に稼働する容量として読み取ってしまうと、需要を過大評価しかねません。

スケジュールの遅延だけでAI需要が消失したと判断することは困難です。私は、資金や顧客需要だけでなく、変圧器の調達、送電網の増設や許認可の進捗状況を併せて見るべきだと考えています。

この電力制約は、学習用施設だけでなく、推論や一般的なクラウド業務を処理する施設にも影響を及ぼす可能性があります。遅延しているプロジェクトの大半が学習用であるという根拠がないまま、施設の用途を限定してはなりません。

変圧器や送電網、地域社会の懸念が建設スケジュールにどのような影響を与えているのかを見ていきます。

🔌 一部の大型変圧器は納品までに数年かかる

Wood Mackenzieは、大型発電機昇圧用・電力用変圧器の平均納期が約3年に達し、一部では4〜5年の事例も確認されたと説明しています。規格や時期、メーカーによって差が大きく、すべての変圧器に同じ納期が適用されるわけではありません。

変圧器は、高電圧の電力をデータセンターが使用できる電圧に変換する設備です。これがなければ、発電所から電力を引き込む手段そのものがありません。では、なぜ突如としてこれほど不足するようになったのでしょうか。

大型電力用変圧器には、プロジェクトごとの個別設計や熟練した技術者、生産・試験設備が欠かせません。方向性電磁鋼板5や銅といった原材料も必要です。Wood Mackenzieの2025年8月の分析では、米国の電力用変圧器における年間需給ベースの不足分を約30%と推計しています。もっとも、供給が完全に途絶えたという意味ではありません。

同分析では、米国の電力用変圧器供給の約80%、配電用は約50%が輸入によるものと推計されています。発電機昇圧用変圧器の需要は2019年比で274%増加したとみられています。変圧器の種類によって需給や納期6が異なるため、全体を一律の比率で語ることはできません。

こうした状況下で、世界資源研究所(WRI)は電力インフラの不足によりデータセンターの建設スケジュールが24〜72カ月延長されていると分析しました。これは電力制約に直面しているプロジェクトの遅延事例であり、すべてのデータセンターにおける最短工期を意味するものではありません。

供給不足が長期化すると、企業は納期を確保するために実際の所要量以上に発注するインセンティブが働きます。注文の変動がサプライチェーン全体で増幅されるブルウィップ効果7が懸念されるのはそのためです。ただし、発注量、倉庫在庫、実際の設置量は分けて確認する必要があります。