第242号

AIに期待しつつも、取り残される不安は共存し得ます

AIへの期待、取り残される不安、そして組織の準備水準はそれぞれ異なる問題です。国別の世論調査や韓国の会社員調査、GTM戦略アドバイザリーの経験を交えて読み解きます。

ビジネスAIに期待しつつも、取り残される不安は共存し得ます

AIをあまり心配していないという言葉は何を意味するのか

韓国はAIに対して楽観的な国だという話をよく耳にします。利用率が急速に上昇しており、AIに対する懸念が他国よりも低いという調査結果もあります。

しかし実務の現場からは、また違った声も聞こえてきます。AIが役に立つのは分かるものの、自分だけがうまく使いこなせず取り残されるのではないかと不安だ、という声です。

私は、この二つの反応は共存し得るものだと考えています。技術の効用を期待することと、その変化の中で自身の立ち位置を心配することは別の問題だからです。ただし、異なる調査結果を安易に結びつけて、韓国の人々の導入動機を一つに決めつけるべきではありません。

韓国の回答者の61%は期待と懸念が同程度でした

ピュー・リサーチ・センターが2025年に25カ国を対象に、AIの日常的な利用が増加することに対する感情を尋ねました。韓国では「期待より懸念のほうが大きい」という回答が16%で、調査対象国の中で最も低い結果でした。「期待のほうが大きい」という回答は22%、「双方が同程度」という回答は61%でした。

最も多かったのは、期待と懸念が同程度だという回答でした。「懸念のほうが大きい」という回答が少ないことだけを理由に、韓国の人々がAIをほとんど心配していないと解釈してしまうと、この61%を見落とすことになります。

米国では「懸念のほうが大きい」という回答が50%、「期待のほうが大きい」という回答が10%でした。国ごとの違いはあるものの、この設問は期待と懸念のどちらが大きいかを尋ねているのであって、懸念がまったくないかを問うたものではありません。

米国と中国の違いも理由までは証明しない

スタンフォード大学の『AI Index 2026』は、複数の機関による世論調査を集約して比較しています。この報告書に掲載されたIpsosの調査では、中国におけるAI製品・サービスへの期待が高い傾向にあり、北米や欧州では期待が低く懸念が高い傾向が見られます。

同じ報告書には、自国政府がAIを責任を持って規制するだろうという信頼度も掲載されています。米国は31%、シンガポールは81%でした。この数値は、政府に対する信頼が国によって異なることを示しています。

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私はテクノロジーを受け入れる姿勢を見る際、政府や企業に対する信頼も重要だと考えています。技術が生活を便利に変えた経験、雇用に対する見通し、問題が起きた際に保護してもらえるという信頼が複合的に影響を与え得るからです。

しかし、国別の回答結果を並べただけで、米国の懸念は規制への不信のせいであり、中国の期待は政府への信頼のせいだと断定することはできません。それぞれの調査で何を尋ね、誰を対象にしたかも異なるからです。

中国にも競争から取り残されることを心配する人がいるかもしれませんし、韓国にも技術と制度を信頼して使っている人がいるはずです。国全体に単一の動機を当てはめてしまうと、同じ国の中にある異なる経験を見落としやすくなります。

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韓国の会社員調査から見えた不安と組織の課題

マイクロソフトが2026年6月に公開した韓国版ワークトレンドインデックス(Work Trend Index)では、急速に適応できなければ取り残されかねないという危機感を抱いている回答が78%に達しました。

この調査は、業務にAIを活用するナレッジワーカーを対象としています。グローバルの本調査は10カ国2万人を対象に実施され、韓国の数値はその後に別途公開された市場データです。韓国の国民全体を対象としたピュー研究所の世論調査とは、標本も設問も異なります。

韓国の調査結果で注目すべき項目は次のとおりです。

  • 経営陣とAI戦略の方向性が明確に一致していると肯定的に答えた割合は16%でした。
  • 業務の再設計が直ちに成果につながらなくても、その試み自体が評価(報酬)されると見ている割合は7%でした。
  • 以前よりも水準の高い成果物を作成できているという回答は54%でした。

特に7%という数字は、すべてのAI活用の評価(報酬)の有無を尋ねたものではありません。成果がすぐに出ない業務再設計の試みであっても認められるかどうかを扱っています。

この結果は、個人が感じる変化の速度と組織による支援との間に差が生じている可能性を示しています。ただし、同一人物がどの項目を合わせて回答したかを分析しない限り、方向性が不明確だから不安が生じたという因果関係を確定することはできません。

それでも、導入率だけを見ていると見落としがちな問いを投げかけてくれます。従業員は新しい手法を試す時間と基準を与えられているのか、その過程で失敗しても再び挑戦できるのか、という問いです。

利用率は準備水準の代わりにはならない

マイクロソフトのAI普及報告書は、2026年第1四半期における韓国の生成AI利用率を37.1%と推計しました。比較期間である2025年下半期より6.4ポイント上昇した数値です。

この指標は、15〜64歳の生産年齢人口を対象に、集計された利用シグナルをOS・デバイスのシェアやインターネット普及率などに合わせて補正した推計値です。先述の会社員向けアンケートの回答率と同じ方式で算出された値ではありません。

急速に普及していることは確認できます。しかし、どれほど上手く活用しているのか、会社が業務や評価の基準を定めているかまでを、利用率一つで判断することはできません。

Oswarldの視点

この資料を見ながら、GTM(Go-to-Market)戦略アドバイザリーで繰り返し直面した光景を思い出しました。

企業の導入プロジェクトでは、まず社内のAIツール利用率を提示されることがよくありました。利用率が高ければ組織の準備は整っていると安心する雰囲気でした。ところが数カ月後に成果を尋ねると、答えが曖昧なケースがありました。

私が見てきた事例の中には、組織が業務を設計したことで利用率が高まったのではなく、個人がそれぞれの必要性や不安から先に使い始めたケースがありました。会社の評価や報酬が定まる前に、利用だけが先行して増えていたのです。

だからこそ、私は高い利用率を目にしたとき、その次の問いを投げかけてみるべきだと考えています。どのような業務に使っているのか、結果を誰が確認しているのか、チームが学んだ手法が他の人にも共有されているのか、と。

AIに対する信頼と、取り残されるかもしれないという不安は共存し得ます。人によって動機も異なります。ツールが有用だから使っている人にも業務の基準は必要ですし、不安から使い始めた人にも実際に役立つツールと教育が必要です。

組織が果たすべき役割は、従業員に対してどちら側のタイプかをラベル貼りすることではなく、条件を具体的に整えることにあると考えます。AIに任せてもよい業務、結果を判断する基準、新しいやり方を試行して評価される方法を一緒に決めることです。

利用率が高いという知らせを聞けば、喜ぶこともできます。ただ、その数字だけで準備が完了したとは判断しないでほしいと思います。私が現場で見てきた差は、ツールを使う人の数と、その活用を組織の成果へと結びつける準備の間にあったからです。


参考資料と関連リンク

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著者 アン・グァンソプ(Oswarld) は世宗大学校 兼任教授、INLEVEL9 戦略コンサルタントです。経歴、研究、著書、最近の活動は著者紹介で更新しています。 最近の活動 · 2026年7月:HEMA-2: A Consolidation-Aware Tri-Memory Architecture with Multi-Channel Scheduling for Lifelong Conversational AI