第254号

何も要求しないコンテンツが勝っています

おすすめフィードでは初めて見る人に関心を作り、ニュースレター・検索では十分に説明し、商品ページでは購入を助ける必要があります。この三つの仕事を一つのショート動画にすべて任せると、伝わりにくくなります。

ビジネス何も要求しないコンテンツが勝っています

発見・理解・転換を一つのコンテンツに詰め込まないでください

15秒の動画でブランドを紹介し、製品の仕組みを説明し、信頼を得て、さらに購入まで呼びかけると考えてみてください。伝えたいことは多いのに、見ている人はこのブランドに初めて出会ったばかりかもしれません。背景を説明するうちに、本来関心を引くはずの場面は後回しになり、購入を勧める段階では、なぜ買うべきかを十分に伝えられません。

コンテンツを作る前に、このコンテンツが誰にどこで出会い、どんな役割を果たすのかを決めなければなりません。 私は、おすすめフィードでは発見を、ニュースレター・検索・コミュニティ・ホームページでは理解を、商品ページ・相談・セールスでは転換を担わせるのが正しいと考えています。

出会う経路優先的に担う役割盛り込む内容
Shorts・リール・TikTokのおすすめフィード発見:初めて見る人に関心を持たせる文脈がなくても理解できる一場面、一つの主張、一つの問い
ニュースレター・検索で読む記事・コミュニティ・ホームページ理解:もっと知りたい人が判断できるよう助ける背景、根拠、比較、問いへの答え
商品ページ・相談・セールス転換:購入を検討する人が決断できるよう助ける購入理由、価格、利用条件、行動喚起

このように役割を分ければ、短いコンテンツから外した説明をどこに置くかも決めることができます。フィードで関心を持った人が読み進められる記事があり、その記事を読んだ後に購入を検討する人へ必要な情報がつながっていくべきです。より刺激的なコンテンツを作ることが、この記事の結論ではありません。

おすすめフィードでは自分を知らない人から考える

ショート動画・Reels・TikTokのおすすめフィードは、フォロワーだけにコンテンツを届ける場ではありません。アルゴリズムが利用者の関心や反応をもとに動画を選んで表示するため、自分のアカウントや過去のコンテンツを一度も見たことがない人にも届く可能性があります。

TikTokの公式説明では、最後まで見るか途中でスキップするかといった行動や、いいね、シェアなどをおすすめに使う信号として紹介しています。YouTubeもショート動画をおすすめする際、視聴者が視聴を選ぶかどうか、どれくらい見るかなどを見ていると説明しています。

制作者はこの条件に合わせる必要があります。前の動画で説明した概念をすでに知っていると仮定したり、自社紹介を最初に長々と入れたりすると、初めて見る人が内容についていきにくくなります。いくつもの条件を順に理解して初めて成り立つ主張であれば、短い動画一本で伝えるのも難しくなります。

そのため、おすすめフィードに載せる際は、単体でも意味が通じる一つの場面や一つの考えに集中したほうがよいでしょう。製品のすべての機能を紹介するよりも、どんな状況で使うのかを一つだけ見せるという形です。見終えた後にこの人やブランドをもう一度見たいと思わせられたなら、発見を担うコンテンツとしての役割は果たせたことになります。

おすすめフィードとブレインロットコンテンツ

初めて会う人に要求から積み上げないでください

ブレインロットとは、わざと荒唐無稽に作られた短い動画や、そうしたコンテンツを見続けてぼんやりしてしまうような状態を指す言葉です。この現象を扱ったアンナ・ゲッツフリートとマクシ・ハイトマイアーの研究は、13〜26歳の24人にインタビューしました。参加者たちは、何かを学んだり生産的に行動したりしなければならないという負担なしに見られる点を、こうしたコンテンツの魅力として説明しました。

研究チームは、生産性や意味を要求しないコンテンツを求める動機を「アンチ・グラティフィケーション」と呼びました。24人の経験を解釈した質的研究であるため、すべての利用者の嗜好や広告効果を測定した結果ではありません。ただ、人々がコンテンツの何を負担に感じているかを考えさせてくれます。

私はこの部分を、実務では「最初から見返りを要求するな」という意味に読んでいます。「これを見れば成長できます」「必ず保存してください」「今すぐ購入してください」が立て続けに出てくると、見た瞬間からやるべきことが生まれます。休もうとフィードを開いたのに、また学び、記憶し、行動しなければならなくなるわけです。

初めて見る相手には、コンテンツそのものを見て通り過ぎるだけの余裕も必要です。ある場面が面白かったり、ひとつの説明が役に立ったりすれば、それだけで終わってもかまいません。発見を委ねたコンテンツでは、購入・保存・登録といった行動喚起、つまりCTAを最小限にしようということです。内容の価値をなくしたり、意味のない動画ばかり作ろうという話ではありません。

説明が必要な内容は、もっと読める場所に置く

おすすめフィードだけで説明を終わらせようとすると、内容が過度に単純化されてしまいます。詳しい背景、主張を支える根拠、他の選択肢との比較は、ニュースレターや検索で見つけて読む記事、コミュニティやホームページで続きを語るほうがいいです。

この経路をたどる読者が、みな自分をすでに知っている人である必要はありません。検索で初めて訪れる人もいます。違いがあるのは、その人が今知りたいことを求めてきたのか、興味を持ったのでもっと読もうと思ったのか、という点です。何を知りたいのかに合わせて、十分な説明を提供できます。

たとえば業務用ソフトウェアを紹介するなら、おすすめフィードでは、繰り返していた作業のひとつがシンプルになる様子を見せられます。興味を持った人には、ホームページの記事で設定方法、必要な権限、向いている業務と向いていない業務を説明します。その次に商品ページでは、料金と利用範囲、導入手順をはっきり伝えます。同じひとつの製品を扱っていても、コンテンツごとに答えるべき問いは変わってくるのです。

購入を検討している人には、行動を促す呼びかけが必要です。価格と条件を確認した人が、申し込んだり相談を予約したりする方法を簡単に見つけられるようにしなければならないからです。最初に発見した瞬間と、購入を決める瞬間に同じ呼びかけをしてしまうのが問題です。

ショートフォームの到達を、そのまま売上と同じに見てはいけません

2025年放送媒体利用行動調査では、ショートフォーム利用者の5.7%が、直近1か月以内にショートフォームを見た後に製品を購入した経験があると答えています。ショートフォームを見ることと購入することの間には、別の判断プロセスが存在することを思い起こさせる数字です。

この5.7%は、特定の広告を見た人のうち何人が購入したかを測る広告転換率ではありません。個別キャンペーンの成功基準としてそのまま使うことはできません。その代わり、コンテンツに与えた役割に応じて成果を見る際の参考にはなります。

発見の役割を担わせたショートフォームであれば、初めて見る人に到達したか、視聴が続いたか、他のコンテンツにも関心を示したかをまず見るべきです。説明の役割を担わせた記事であれば、必要な内容を読んだか、再訪問したり質問を残したりしたかを確認します。商品ページや相談では、申し込みと購入、そしてその過程でかかったコストを確認します。

ショートフォーム広告を実施していて、目先の購入が少ないという理由だけで発見の成果まで失敗として処理してしまうと、関心が生まれた後のプロセスを見落としがちです。逆に、再生回数だけが伸びたからといって、事業成果が生まれたと見なすこともできません。最初から各コンテンツの目的を定め、到達以降の読み込み・再訪問・購入がどうつながっていくのかを併せて見る必要があります。

年齢でチャンネルを決めるより、出会う経路を見る

「Z世代だからショート動画、50代だからブログ」というように年齢だけでコンテンツの形式を決めると、実際の利用実態を見誤ることがあります。同じ2025年放送媒体調査で、韓国の60代のOTT利用率は70.8%でした。OTTには長尺動画も含まれるため、この数値がそのまま60代のショート動画利用率というわけではありません。

ショート動画プラットフォームの利用層が広がっている様子は、韓国ギャラップの2025年調査でも確認できます。TikTokの年間利用率は2021年の10%から2025年には35%へと増え、利用者層も10代中心から50代まで広がりました。

同じ人でも、フィードでたまたま目にした動画と、自分で検索してたどり着いた記事には、それぞれ違うものを期待します。前者では背景知識がなくても関心を持てる必要があり、後者では気になっていた点に十分な答えが得られる必要があります。だからこそ、コンテンツの役割を決めるときは、年齢よりもどこでどんな関心を持って出会ったのかを先に見るほうがよいでしょう。

Oswarldの視点

私は世代論が好きではありません。Z世代、ミレニアル世代とひとまとめにして説明する方式のことです。そう分けると説明は簡単になりますが、間違いやすくもなります。

今回の記事でも私が重要だと見ているのは、利用者の年齢よりもコンテンツを供給する側の選択です。おすすめフィードには発見を、十分に読める場所には理解を、商品と相談には転換を任せようということです。

多くの企業がこの三つを一つのコンテンツに詰め込もうとします。15秒でブランドを説明し、教育し、信頼をつくり、購買までさせようとするわけです。そうすると、初めて見る人には理解しづらく、もっと知りたい人には説明が足りなくなります。購買を決める根拠を十分に残すことも難しくなります。

私であれば、コンテンツを作る前に、この人が初めて私たちを発見しているところなのか、さらに調べているところなのか、購買を検討しているところなのかをまず決めます。そのうえで、今必要な内容と次に読む内容を分けます。フィードでは気軽に出会えるようにしつつ、気になって調べに来たときには十分に説明できる資料を準備しておくのです。

おわりに

コンテンツを作る側は、人々がコンテンツに触れる経路に応じて役割を分けるべきです。おすすめフィードでは、初めて見る人でも理解できる一場面や一つの考えを伝え、行動喚起は減らします。説明が必要な内容はニュースレター・検索・コミュニティ・ホームページで続け、商品ページや相談では購入する理由と価格、条件をはっきり示します。

一つのコンテンツが発見から購入までをすべて担うべきだと求めなければ、それぞれの経路で何を作り、どんな成果を見るかがより明確になります。年齢で形式を決める前に、まずその人がどこでコンテンツに出会ったのかを確認してみてください。


💬 いま作っているコンテンツには、発見・理解・転換のうちどの役割を担わせていますか?一本にあまりに多くのことを求めすぎていないかも見直してみてください。

📨 ショートフォーム一本に紹介・説明・購入をすべて詰め込もうと悩んでいる同僚がいたら、この記事を伝えてあげてください。

参考資料と関連リンク

アン・グァンソプ(Oswarld)のイラスト

著者 アン・グァンソプ(Oswarld) は世宗大学校 兼任教授、INLEVEL9 戦略コンサルタントです。経歴、研究、著書、最近の活動は著者紹介で更新しています。 最近の活動 · 2026年7月:HEMA-2: A Consolidation-Aware Tri-Memory Architecture with Multi-Channel Scheduling for Lifelong Conversational AI