Adobeのサブスクリプション解約訴訟と顧客維持指標
Adobeのサブスクリプション解約訴訟の合意内容と、各国のダークパターン規制を見ていきます。GTM実務で顧客維持率と満足度を併せて見るべき理由も取り上げました。
AI・テックAdobeの解約訴訟合意
私はロングブラック(Longblack)にスピーカーとして参加し、ダークパターンについて話したことがあります。消費者が望まない選択をしてしまうような画面設計についての話でした。今回のAdobe訴訟の合意を見て、こうした設計が企業の顧客維持指標とどうつながっているのか、改めて考えさせられました。
米国司法省は、2026年3月13日にAdobeとの間で1億5,000万ドル規模の合意案を裁判所に提出したと発表しました。7,500万ドルは民事制裁金で、残りの7,500万ドルは顧客に提供する無料サービスの価値です。発表時点では裁判所の承認を待つ合意案であり、全額を顧客に現金で返還する内容ではありません。Adobeは違法行為を認めないまま合意したと明らかにしました。
訴訟の争点は、加入時に契約条件を十分に伝えていたか、解約を過度に難しくしていたかという点でした。特に私の目を引いたのは、訴状に引用された役員の発言です。中途解約時の違約金について「Adobeにとってヘロインのような存在」だと表現していたという内容でした。違約金収入と顧客維持に会社がどれほど依存していたかを問わせる一節です。

月次決済と1年契約
問題となったプランは「Annual, Paid Monthly」です。1年契約を結び、料金を毎月分割して支払う方式です。訴状によると、加入から14日を超えて中途解約した場合、残りの契約金額の50%が違約金として課されました。いつでも違約金なしで解約できる月間プランとは条件が異なります。

原告が使用した料金プラン画面です。月別に表示された価格と契約期間を併せて確認する必要があります。
米国政府は2024年6月に提起した訴訟で、Adobeが1年契約と違約金の条件を小さな文字やリンクの中に置いて分かりにくくしていたと主張しました。解約手続きに不要な段階や待機時間を組み込み、そこで初めて違約金を目立つ形で知らせて解約を諦めさせていたという主張も含まれています。加入条件の説明と解約手続きの両方が問題となった事件です。
Adobeの2025会計年度の売上高は約237億7,000万ドルです。現金制裁金7,500万ドルは、その売上高の約0.32%に相当します。ただし、売上高との比較だけで会社が感じる負担を判断することはできません。私はむしろ、合意案に加入前の違約金説明と簡単な解約方法の提供が含まれている点に注目しています。金銭の支払いに加えて、運用方法自体を変えさせる内容だからです。