豪州の青少年SNS制限、アカウント数の次に確認すべきこと
豪州で約470万件のアカウントが削除・制限されました。既存利用者のアカウント維持率と全体の保有率を区別し、青少年の精神健康への効果をどう確認するかを見ていきます。
社会アカウントは減ったものの、精神健康への効果は別途確認が必要です
2025年12月10日、豪州は指定されたソーシャルメディアプラットフォームに対し、16歳未満の利用者によるアカウント作成・保有を防ぐための合理的な措置を義務付け始めました。翌年1月、政府は施行初期に約470万件のアカウントが削除またはアクセス制限されたと発表しました。これは470万人の子どもが利用をやめたという意味ではありません。1人が複数のアカウントを持てるからです。
その後の保護者調査では、アカウント保有が減少すると同時に、既存利用者の相当数がアカウントを維持していたことが分かりました。これは矛盾する結果ではありません。誰を基準に算出したかを見て初めて理解できます。より大きな問いはその先にあります。アカウントの減少は、子どもたちの精神健康の改善につながったのでしょうか。
470万件と70%では分母が異なります
470万件は、各プラットフォームが政府に報告した、2025年12月中旬までの削除・アクセス制限アカウント数です。休眠していたアカウントも含まれている可能性があります。プラットフォームが措置を講じた根拠にはなりますが、実際の利用者数や利用時間の変化までは示しません。
豪州のオンライン安全局(eSafety)は、2026年1月19日から2月2日にかけて、8〜15歳の子どもを持つ親・保護者898人を調査しました。規制前に該当プラットフォームのアカウントを持っていた子どものうち、その後もアカウントを維持していたと回答した割合は、Instagramが69.1%、Snapchatが69.4%、TikTokが69.3%でした。全青少年の約70%がアカウントを持っているという意味ではありません。
同じ調査で、対象プラットフォームのいずれか1つ以上にアカウントがあると答えた割合は、施行前の49.7%から施行後には31.3%へと減少しました。保護者が把握している範囲での回答という限界はありますが、アカウント保有がほとんど変わっていないと読むことはできません。eSafety、2026年3月モニタリング報告書
この2つの数値は併せて見る必要があります。プラットフォームがアカウントを大量に制限したとしても、一部の子どもは引き続きアカウントを持てる可能性があります。既存アカウントがまだ確認されていない場合や、新しいアカウントを作った場合も考えられます。アカウント保有と、ログインなしでの閲覧、総利用時間はそれぞれ別の指標です。
私が警戒しているのは、執行件数を最終的な成果として代用することです。アカウント制限数は、施行状況を把握するうえで有用です。しかしそれだけをもって子どもたちがより安全になったと主張するなら、見栄えの良い数字で成果を誇張する虚栄指標1になりかねません。
政府が不利な数字を隠したと断定することもできません。70%台の維持率を公開したのも、ほかならぬeSafetyです。同機関はアカウント数と利用者数の違いを説明し、政策の実施と影響を評価する2年間の追跡調査も開始したと明らかにしています。今後は、その評価が実際の安全と健康の変化をどれほどよく捉えているかを見る必要があります。
豪州では、プラットフォームが義務を履行しない場合、裁判所を通じて最大4,950万豪ドルの民事制裁金を科すことができます。子どもや保護者を処罰する仕組みではありません。強い制裁を設けている分、プラットフォームの措置が実際にどのような変化を生むかを評価する責任も大きくなります。