リリースからわずか3日でアクセス停止となったFable 5
米国政府の指針によりFable 5とMythos 5への顧客アクセスが停止されました。単一モデルへの依存がもたらす運用リスクと、ソブリンAI論議への影響を掘り下げます。
社会リリースから3日で全世界のアクセスが遮断されたFable 5
1999年、Appleは「Power Mac G4」の広告に戦車を登場させました。高性能コンピューターに適用されていた米国の輸出規制を、製品性能の高さをアピールする素材として利用したのです。広告ではG4を兵器として表現していましたが、実際の争点はコンピューターの演算性能や輸出先に応じた規制でした。
2026年6月12日、AIモデルへの顧客アクセスが停止されました。Anthropicは米国政府の輸出管理指針に基づき、「Fable 5」と「Mythos 5」を全顧客から回収すると発表しました。リリースからわずか3日後のことでした。海外のAIサービスを利用する企業は、ベンダーの方針だけでなく、そのベンダーが従う政府規制からも影響を受けるという現実が浮き彫りになりました。
6月9日リリース、12日に顧客アクセス停止
6月9日、AnthropicはFable 5とMythos 5を発表しました。両モデルは同じ基礎重み(ベースウェイト)を使用していますが、安全対策(セーフガード)と提供対象が異なります。一般顧客向けのFable 5は高リスクなリクエストをOpus 4.8に迂回させるなどの制限を設けており、Mythos 5はサイバーセキュリティ協力事業「Project Glasswing」の参加機関などに限定して提供されていました。
Anthropicの説明によると、政府指針は6月12日午後5時21分(米東部時間)に届きました。両モデルに対する外国人のアクセスを停止するよう求める内容で、米国内に居住する外国人やAnthropicの外国人従業員も対象に含まれていました。
同社は指針を遵守するため、両モデルへのすべての顧客アクセスを停止すると発表しました。米国の顧客も停止の対象です。他のAnthropicモデルには影響がないとしています。なお、Fable 5が「幅広く提供された」という同社の説明を、実際の利用者数の多さと解釈すべきではありません。リリースからの3日間における利用者数は、この発表では示されていません。
Anthropicは、措置の根拠についても異議を唱えています。政府が問題視したとみられるジェイルブレイク(脱獄)1の事例は、他の公開モデルでも確認できる軽微な脆弱性にすぎないという立場です。リリース前に数千時間に及ぶレッドチーム2演習を実施しており、多重の保護機構を広範に回避する手法は見つからなかったと説明しています。ただし、これは同社の見解です。完全なジェイルブレイク防御が困難である点については同社も認めています。なお、6月12日の発表ではアクセス再開の時期は示されませんでした。