第9号

稲作と集団主義の関係とは:三つの研究とその批判を読み解く

中国の大学生・カフェの客・国営農場を比較した米理論の研究を読み、農業と文化の関係をどこまで説明できるのか見てみます。

ビジネス稲作と集団主義の関係とは:三つの研究とその批判を読み解く

農業のやり方は人々の関係にも影響するのでしょうか

私は「米理論」に初めて出会ったとき、半信半疑でした。祖先がどんな穀物を育てていたかが今日の考え方につながるという説明が、あまりにも単純に聞こえたからです。

この理論が注目するのは穀物の成分ではなく、農業を営むために必要な協力です。水と労働力を隣人と共に管理してきた経験が、人と人との関係を重視する文化に影響を与えた可能性がある、というわけです。これを検討した研究を読みながら、私は少しずつ考えが変わっていきました。

文化に関する説明は興味深いものですが、簡単に誇張されがちでもあります。稲作地域で育ったという理由だけで、その人の性格が分かるわけではありません。まずは研究がどんな集団を比較し、何を測定したのかから見ていきましょう。

2014年:中国国内で地域を比較しました

トーマス・タルヘイムの研究チームは、2014年に中国の6か所で漢民族の大学生1,162人を対象に心理課題を実施しました。稲作が発達した南部出身の学生は、小麦栽培が発達した北部出身の学生に比べて、関係性を中心に考え、相互依存性を示す傾向が強くありました。稲作と小麦栽培地域の境界にある近接した県同士を比較した場合にも、差が現れました。研究者によるペンシルベニア大学での発表紹介

この研究の出発点は、伝統的な水田耕作と畑作に必要な協力の違いです。水田耕作には多くの労働力が必要で、複数の農家がつながる用水路では水を引く時期を調整しなければなりません。研究チームは、こうした相互依存が小麦栽培よりも強い関係中心の文化を生んだ可能性を提示しました。バージニア大学の研究発表

だからといって、小麦栽培に協力や灌漑がまったく必要ないという意味ではありません。作物ごとの栽培方法は気候や地域によって異なります。この理論で見るべきなのは、「米は協力、小麦は独立」という単純な区分ではなく、共同で処理しなければならない作業がどれほど多かったかという点です。

同じ国の中で比較したという点は、国家間の比較よりも一部の条件を近づけやすくしてくれます。それでも、学生たちが育った地域は農業以外の面でも多様に異なる可能性があります。この結果だけで、稲作が差の唯一の原因だと結論づけることはできません。