アマゾンの人員削減・新卒採用、そしてAI利用量競争
アマゾンは人員削減とインターン・新卒採用を同時に進めています。社内でのAI利用量競争の事例を通じ、生産性と人材育成をどのように評価すべきかを考えます。
ビジネス人員削減とインターン・新卒採用を並行するアマゾン
AWSのCEOマット・ガーマンは、AIを理由に新卒採用を中断することに反対してきました。6月24日付のPlatformerのインタビューでも、アマゾンが今年インターンと新卒者1万1,000人を採用すると明らかにしました。全員が正社員の新入社員という意味ではありません。
アマゾンは2025年10月以降、コーポレート部門の人員を約3万人削減しました。アンディ・ジャシーCEOも、AIによって効率が高まれば今後コーポレート部門全体の人員が減少する可能性があると展望しました。ただし、この見通しが削減された3万人すべてをAIが代替した証拠というわけではありません。
人員削減と新規採用は対象職務や時期が異なるため、並行して起こり得ます。私はこの二つの数字の対比よりも、アマゾン社内で繰り広げられたAI利用量の競争に注目しました。一部の従業員が順位を上げるために利用量を水増ししたと報じられた、いわゆる「トークンマキシング」1です。
利用量ランキングが従業員の行動を変えた
今年5月、フィナンシャル・タイムズ(FT)が報じた内容は次のようなものでした。アマゾン社内には「KiroRank」と呼ばれるリーダーボードが存在していました。従業員がAIコーディングツール「Kiro」をどれだけ多く利用しているかをトークン2消費量で順位付けしたダッシュボードです。アマゾンは開発者の80%以上が週1回以上AIツールを利用するという目標を掲げていました。
FTは、一部の従業員が社内のエージェント3ツール「MeshClaw」を使ってAI利用量を増やしていると報じました。MeshClawはコードのデプロイやメッセージ処理などを自動化できます。こうした自動化自体が無用というわけではありません。業務に必要かよりも、ランキングを上げるのにどれだけ役立つかが利用の動機になってしまうと問題が生じます。
FTの取材に応じた従業員たちは、AIツールを使わなければならないというプレッシャーや、管理職が利用量を非公式にチェックしているという認識を明かしました。アマゾン側は利用量が人事評価に反映されることはないと説明しています。MeshClawに付与されるシステムへのアクセス権や実行権限に対するセキュリティ上の懸念も浮上しました。実際の成果や権限を吟味する前に利用ばかりを奨励すると、コストとガバナンスの問題が生じかねません。以前取り上げたUberの事例でも、AIの利用コストをどう管理するかが争点でした。
年俸の半分をトークンに使えと言われた結果は…?UberのAI予算利用とコスト管理問題Metaでも従業員が作成したトークン利用量ランキング「Claudeonomics」が運用されたのちに閉鎖されたと報じられました。上位ユーザーに称号を付与する仕組みでした。報道されたトークンの総量だけで会社が実際に支払ったコストを算出することはできません。モデルごとの単価や入出力の比率、キャッシュ、契約条件などが異なるためです。
Microsoftでもプレジデントのジュリア・リウソンが「AIの利用はもはや選択肢ではなく、あらゆる役職、あらゆるレベルにおける中核である」という社内メモを送りました。Nvidiaのジェンスン・ファンはさらに踏み込み、「年俸50万ドルのエンジニアが25万ドル分のトークンを使っていないとしたら、ひどく心配になるだろう」と公の場で語りました。
AIの活用を促すことと、トークン消費を成果として認めることは区別しなければなりません。複数の企業による利用推奨の発言があるからといって、すべての企業が同じようなランキングを運用していたり、一斉に失敗を認めたと見なすことはできません。