AI時代の人文学論争と大卒者雇用統計
アレックス・カープ氏とダニエラ・アモデイ氏は、AI時代における人文学の価値を異なる視点で捉えています。両者の主張と米国の大卒者雇用統計を比較しながら、専攻と実際の業務能力をどうつなげるか考えてみました。
社会人文学専攻者の仕事に警鐘を鳴らすカープ
AIによって人文学がより重要になるという記事と、人文学の学位が役に立たなくなるという記事を同時に目にします。正反対の結論なのに、どちらも断定的です。私はこうした主張をそのまま受け入れる前に、どんな仕事とどんな能力について語っているのかを確かめてみたいと思いました。
2026年1月のダボス世界経済フォーラムで、パランティアCEOのアレックス・カープはラリー・フィンクと対談し、AIが人文学専攻者の仕事に打撃を与えるだろうと述べました。エリート大学で哲学を学んだ自身を例に挙げ、他のスキルがなければその専攻の能力を市場でアピールするのは難しいだろうと語りました。
ここで区別すべきなのは、人文学を学ぶ価値と、特定の仕事が要求する能力です。カープの発言は主に後者、つまり採用と経済的価値に関する見通しです。
3月12日のTBPNインタビューでは、職業訓練を受けた人や神経多様性1を持つ人を有利な集団として挙げました。カープ自身はハバフォード・カレッジ、スタンフォード・ロースクールを経て、ドイツのゲーテ大学で哲学の博士号を取得した人物です。この経歴が発言を目立たせますが、自身の学歴や特性を根拠にした見通しが、すべての人に当てはまる法則というわけではありません。
カープは以前のインタビューでも、名門大学の学歴や高い知能だけでは十分ではなく、具体的な専門性が必要だと主張してきました。この警告を雇用データと比較してみる必要があります。
採用統計が示す範囲
カープが強調したのは、学歴よりも実際の業務で使える能力です。
彼はバッテリー生産に携わる技術人材や、専門大学教育を受けて警察官として働いた後、米陸軍のMavenシステムを運用するようになった人物を例に挙げました。新しい技術を身につければ重要な業務を任せられるという説明でした。しかしこれを、職業訓練を受けた人はAIに代替されるリスクがないという保証として受け止めることはできません。
就職の難しさそのものはデータにも表れています。ニューヨーク連邦準備銀行が公開した2025年第4四半期のデータでは、米国の22~27歳大卒者の失業率は約5.7%、不完全雇用率2は42.5%でした。ここでの不完全雇用とは、学士号が通常求められない職業に就いている割合を指します。その仕事に不満を感じているかどうかまで測定した数値ではありません。
この数値は人文学専攻者だけを集計した結果ではありません。年齢やキャリアが異なる労働者全体と単純に比較して、大学を出たせいで不利になったと結論づけるのも慎重であるべきです。
カープは、人それぞれ特に得意なことを見つけ、その業務に集中できるよう配置するのが自分の仕事だとも語りました。私はここに、人を理解し状況に応じて判断する能力が含まれていると見ています。ただし、こうした能力が人文学の学位だけで身につくわけではありません。教育や仕事、さまざまな経験を通じて養えるものです。
パランティアは2025年、高校卒業者を対象にメリトクラシー・フェローシップも開始しました。有給プログラムを修了すると正社員面接の機会が与えられる仕組みです。既存の大学教育を批判しつつ、社内で人材を育ててみようという試みです。このプログラムの存在は、大学の外にも教育の道があり得るという事例ではありますが、一般的な大学教育より優れているという結果がすでに実証されたという意味ではありません。