第10号

戦略文書を書くときは、何を優先し何を諦めるかを書いてみましょう

ジェイソン・コーエンの反対テストとロジャー・マーティンの五つの質問をもとに、仕事の優先順位を決める戦略文書について考えてみます。

ビジネス戦略文書を書くときは、何を優先し何を諦めるかを書いてみましょう

「顧客中心」と書いてみて、何が変わるのか

私も以前、戦略文書を作りながら「私たちは顧客中心で行く」と書いて満足した経験があります。方向性が定まったような気がして、チームメンバーもうなずいてくれました。しかし、その一文だけでは、異なる顧客からの要望が入ってきたときに何から手をつけるべきか決めるのが難しかったのです。

最近、ジェイソン・コーエンの文章を読んでこの点を改めて考えました。コーエンは「顧客中心」のような反対しにくい表現と、実際に代替案を諦めなければならない選択とを区別します。戦略文書が仕事の役に立つには、後者が含まれていなければならないという話です。

反対テストで曖昧な文章を見つける

コーエンが紹介する「反対テスト」は、戦略の文章の反対側にも合理的な代替案があるかどうかを見る方法です。「良いデザインを作る」の反対である「悪いデザインを作る」は、通常選択肢にはなりません。一方、完成度の高い利用体験を製品の中で提供するか、外部の拡張機能によって幅広い要望を受け入れるかは、それぞれに長所と短所がある選択です。

コーエンは、選択する際には不利な結果も受け入れ、複数の選択が互いに助け合っているかを確認すべきだと説明しています。同時に二つの長所を得られるならそうすればいいものの、両者が衝突するときは定めた優先順位に従うべきだという意味です。ジェイソン・コーエン「Strategic choices: When both options are good」

このテストを通過したからといって、事業の成功が保証されるわけではありません。ただ、何を決定したのかさえ分かりにくい文章を見つけ出すのには有用です。

例えば、飲食店を準備するとしましょう。「美味しい料理を売る」とだけ書いても、メニューを決めるのは難しいものです。ランチタイムに手早く食事を済ませたい会社員を主に受け入れるのか、夜にゆったりと食事をしたい客を主に受け入れるのかを決めれば、メニューや席数、営業時間を議論できます。どちらが無条件に良いというより、自分が選んだ客層に合わせて準備すべきだということです。