第95号

AIが匂いを識別するには、どんなデータが必要か

匂いを感知するセンサーはすでに存在します。この測定値をさまざまな環境で使えるAI学習データにするには、まだ解決すべき課題が多くあります。

AI・テックAIが匂いを識別するには、どんなデータが必要か

匂いを説明することと感知すること

AIは花の香りやコーヒーの香りを文章で説明できます。しかし、その説明だけでは、今この部屋にどんな匂いが漂っているのかを感知することはできません。実際に空気中の物質を測定するセンサーと、その信号を解釈する技術が必要です。最近Noema誌で読んだ記事が、この違いを取り上げていました。

機械が匂いを感知し、解釈する研究はどこまで進んでいるのでしょうか。

機械嗅覚1の研究はすでに存在しますが、言語・視覚の研究に比べると規模が小さいです。Kordel K. France研究チームがarXivとSemantic Scholarで2015年1月から2025年5月までの論文を集計した結果、機械嗅覚に関する論文はコンピュータビジョン・自然言語処理の論文量の1%にも満たなかったそうです。検索範囲や分類方法による数値ではありますが、研究規模の違いを示しています。

私が注目したのは、研究が少ない理由でした。センサーが小型化・高精度化するだけでは十分ではないようです。異なるセンサーの測定値を比較し、同じ匂いをどんな名前と基準で記録するかも決めなければなりません。

「何ができる」のかを見分ける

「匂いを嗅ぐAI」という表現は、異なる技術を指す場合があります。化学構造から香りを予測するモデル、センサー信号から特定のガスを識別する装置、匂いに関する文章を生成するモデルは、それぞれ行っていることが異なります。Noemaが指摘したBBC Futureの味・色の連想事例も、言語モデルの答えを感覚器官による測定と混同してはならないという話として読めました。

ロボットが周囲の環境を把握し、行動を計画するワールドモデル2の研究では、この区別がより重要になります。画面には映らない漏れや腐敗を化学信号で感知できれば、ロボットが参照できる情報が増えるからです。ただし、すべてのAIに嗅覚が必須だと結論づけることはできません。必要な感覚は、任せるタスクによって変わります。