第77号

クラフトンの契約紛争で証拠となったChatGPTの会話

サブノーティカ開発会社の経営陣解雇を契約違反と判断したデラウェア州裁判所の判決。AIの助言を実行した経営陣の判断と責任を検討しました。

AI・テッククラフトンの契約紛争で証拠となったChatGPTの会話

契約紛争の判決文に登場したChatGPT

クラフトンとサブノーティカ開発会社の間の紛争を扱った判決文に、ChatGPTと交わした会話が登場します。クラフトンは開発会社の買収当時、実績に応じて最大2億5,000万ドルを追加で支払うことにしていました。支払額が膨らむと予想されると、キム・チャンハンCEOは条件を再交渉するか、スタジオの統制権を確保する方策をChatGPTに尋ねました。

判決文によると、クラフトンはその後ChatGPTが提案した措置の多くを実行しました。ファンに伝えるメッセージを準備し、開発会社のSteam配信権限を遮断し、中核となる役員・従業員3人を解雇しました。**2026年3月16日、デラウェア州衡平法裁判所は解雇と経営権掌握を契約違反と判断しました。**テッド・ギルのCEO復職と経営権の回復を命じ、追加代金の算定期間も258日延長しました。

バトルグラウンド(PUBG)で知られるクラフトンがどのような契約を結び、裁判所が何を問題視したのかを見ていこうと思います。今回の判決は訴訟の第一段階に対する判断です。損害賠償の問題や追加支払額まですべてが確定したわけではありません。

ゲームが成功すれば追加で支払うとした契約

2021年、クラフトンは海底サバイバルゲーム『サブノーティカ』の開発会社Unknown Worlds Entertainmentを買収する際、5億ドルを先に支払いました。これに加え、スタジオの契約上の売上条件を満たせば最大2億5,000万ドルを追加で支払うアーンアウト(earnout)1の約定が付いていました。続編サブノーティカ2の売上が、その条件達成に重要な役割を果たすと見込まれていました。

判決文で紹介された計算式は、売上基準線6,980万ドルを超えると超過売上1ドルあたり3.12ドルを支払うが、追加代金は2億5,000万ドルを超えない構造でした。共同創業者のチャーリー・クリーブランドとマックス・マグワイア、CEOのテッド・ギルは「中核役員・従業員」に指定されました。このうち1人でも在職している間は契約で定めた経営権を維持し、解雇についても契約で合意した事由を満たす必要がありました。

2025年春、クラフトンはサブノーティカ2をその年の8月にアーリーアクセスとして発売し、第4四半期までに167万本以上を販売するという状況を想定していました。内部推計では、追加支払額は基本シナリオで約1億9,180万ドル、楽観シナリオで約2億4,220万ドルでした。これは実際の販売実績や確定した債務ではなく、当時の予測です。クラフトンが社内で評価したスタジオの価値よりも予想支払額のほうが大きいとする分析も出ていました。

**この追加代金の約定は、2021年の買収当時に双方が合意した条件です。**買い手は買収時点で全額を支払う代わりに、買収後の成果に応じて代金を分割で支払うことができ、売り手は事業がうまくいったときにより多く受け取ることができます。支払負担が膨らむ可能性があるということ自体も、その契約構造に織り込まれていたわけです。

判決文には、キム・チャンハンCEOが買収条件に不満を示した社内メッセージが登場します。一方、企業開発担当のパク・マリアは、中核役員・従業員を正当な事由で解雇したとしても、売上条件を達成すれば追加代金を支払わなければならない可能性が高く、訴訟と評判上のリスクだけが膨らみかねないと警告していました。