脳波でロボットを教えるなら、経験を提供した人には何を渡すべきでしょうか
脳波ベースのロボット学習の実験範囲を確認し、熟練者の同意と報酬を技術導入前に決めておくべき理由についてお話しします。
AI・テック脳波はロボットにどんな情報を与えられるのか
人がロボットの行動を見て「間違っている」と感じたとき、その反応を脳波から読み取ってロボットの学習に活用する研究があります。頭皮に電極を装着して脳の電気的活動を測定するEEG、そしてこの信号を機械への入力として使うBCI、すなわち脳・コンピューターインターフェース技術です。
私はこの研究を見て、データを提供した人の取り分が気になりました。熟練者の判断や動作がロボットの訓練に使われるなら、その人にはどんな説明と報酬が必要なのでしょうか。まずは、今の技術でできることから見ていきます。
実験で確認したのは誤り判別と学習補助です
人がロボットのミスに気づいたときに現れる脳波反応は、エラー関連電位(ErrP)と呼ばれます。研究者は測定した信号を分析して、人がロボットの行動をどう評価したかを推定し、これを学習過程のフィードバックとして使います。ユーザーの脳波を分類する準備過程が必要で、判定は常に正しいわけでもありません。
2017年、ドイツのDFKI研究チームの実験では、人が手振りで命令を出し、ロボットはその手振りにどんな行動で応じるべきかを学びました。手振りは別のセンサーで読み取り、脳波はロボットの反応が正しかったかを評価するために使いました。誤り判別のバランス精度はシミュレーション実験で約91%、実機ロボット実験で約90%でした。この数値は誤りと正常な反応を区別した性能です。ロボットがすべての作業を90%成功させたという意味ではありません。Kim等、2017
2020年のICRAで発表されたAkinola等の研究も、観察者の脳波を学習に活用しました。ロボットが障害物を避けて目的地に向かう課題で、脳波から得た評価が学習初期に探索方向を定める助けになりました。人が設定した最終目標や学習の枠組みをなくしたわけではなく、まれな報酬だけでは学びにくい部分を人の評価で補ったということです。Akinola等、2020
2023年、フラウンホーファーの研究チームは、ジェルを塗る電極の代わりに乾式EEG機器でも学習を助けられるかを試験しました。結果は肯定的でしたが、研究対象は3次元のロボットシミュレーションでした。実際の工場の動きや雑音の中でも同じ性能が出るかは、別途確認する必要があります。Vukelić等、2023
2024年に公開されたE2H研究は、少し異なる方式です。脳波から動作を意味する命令を推定し、別の動作生成・制御モデルがヒューマノイドを動かすようにしました。研究チームも、非侵襲的な脳信号だけでは精密な移動経路を読み取ることが難しいため、2段階に分けたと説明しています。これもまた、頭の中の熟練技術をまるごとコピーした実験ではありません。E2H研究